歯並びを整えたいけれど、装置が目立つのは避けたいと考える方に選ばれているのが「裏側矯正」です。しかし、治療期間の目安や部分矯正と全体矯正の違いを、正確に理解していない方も少なくありません。
この記事では、裏側矯正の一般的な治療期間や短縮しやすい条件、期間を短くするための工夫を解説します。また、カウンセリングから保定までの治療の流れも整理しました。
効率的に歯並びを整えたい方は、参考にしてください。
目次
裏側矯正の治療期間

矯正に必要な期間は、歯並びの状態や治療範囲によって変わり、部分的に行う場合と全体的に整える場合では大きな差が出ます。
そのため、治療の目安を知っておくことが納得のいく選択につながります。
ここでは、以下2つの方法をまとめました。
- 部分矯正
- 全体矯正
それぞれ特徴も異なるため、自分のライフスタイルや改善したいポイントに合う方法を見極めることが大切です。
部分矯正
裏側矯正で一部の歯だけを整える部分矯正は、全体矯正に比べて期間が大幅に短いのが特徴です。
治療の目安は6ヶ月〜1年程度で、症例によってはさらに短期間で完了することもあります。
ただし、奥歯の噛み合わせや骨格的な問題がある場合には、適応できないケースもあるため、事前の診断が欠かせません。
以下に、症例ごとに期間の目安をまとめました。
| 症例のタイプ | 期間の目安 | 特徴 |
| 前歯の軽度な傾き | 約6ヶ月〜8ヶ月 | 比較的短期間で整い、見た目の改善が早い |
| 前歯のすき間(空隙歯列) | 約6ヶ月〜1年 | 部分的な動きで対応可能、負担も軽め |
| 軽度の叢生(デコボコ) | 約8ヶ月〜1年 | 動かす歯がやや多く、安定するまで時間を要する |
動かす歯の範囲が限定されているほど短期間で完了しやすいですが、適応症例が限られる点には注意が必要です。
全体矯正
歯列全体を動かす裏側矯正は、部分矯正と比べて治療期間が長くなります。
一般的な目安は2~3年程度で、歯並びの状態や抜歯の有無によっても前後します。
とくに奥歯まで含めて噛み合わせを改善する必要がある場合は、長期にわたる治療が欠かせません。
また、歯の移動量が大きいほど調整にも時間がかかるため、患者ごとに期間は大きく変動します。
| 症例のタイプ | 期間の目安 | 特徴 |
| 軽度の歯列不正 | 約1年半〜2年 | 抜歯が不要であれば比較的早く終了 |
| 中等度の叢生(歯の重なり) | 約2年〜2年半 | 歯を大きく移動させる必要があり時間がかかる |
| 重度の歯列不正・抜歯症例 | 約2年半〜3年 | 奥歯も含めて噛み合わせを改善するため長期化しやすい |
丁寧に全体を整えることで、見た目だけでなく機能面の改善や長期的な安定も得られる点が大きなメリットといえるでしょう。
裏側矯正が短期間になりやすい5つのケース
裏側矯正は、条件によってはより短い期間で完治することも少なくありません。
短期間で整いやすいケースを理解しておくことで、自分に合ったプランを選びやすくなるでしょう。
ここでは、裏側矯正が短くすみやすい5つの条件を紹介します。
- 矯正範囲がピンポイント
- 抜歯せずにすむ
- 患者の年齢が若い
- 歯並びの乱れが軽度である
- 患者が協力的である
ご自身のケースと照らし合わせてみてください。
矯正範囲がピンポイント
裏側矯正の期間が短くなる代表的なケースの1つが、動かす歯の範囲が限られている場合です。
たとえば前歯の軽度な傾きや、数本の歯だけがズレている症例では、全体を大きく動かす必要がないため、治療は比較的スムーズに進みます。
一般的に1年未満で完治し、短期間で見た目の改善を実感できることもあり、部分的な悩みを早く解消したい方に適しています。
ただし、噛み合わせまで整える必要がある場合は対象外となるため、診断の段階で適応範囲かどうかを確認しましょう。
範囲がピンポイントであれば、効率よく結果を得やすいです。
抜歯せずにすむ
歯を残したまま矯正を進められる場合、治療のスピードは大きく変わります。
抜歯を伴わないケースでは、歯の移動範囲が限られるため効率的に矯正が進み、全体矯正でも2年未満で終えられる可能性があります。
とくに歯列に十分なスペースがある人や、軽度の乱れにとどまる症例では、抜歯を避けられることが多く、治療期間を短縮しやすい傾向です。
ただし、歯の重なりが強い場合や骨格的に問題がある場合は抜歯が必要で、その分長期化します。
抜歯の有無は診断段階で決まるため、最初のカウンセリングで確認しておくことが大切です。
患者の年齢が若い
成長期や若年層は、骨や歯の周囲組織がやわらかく、新しい位置に順応しやすいため、矯正の進行がスムーズです。
10代後半から20代前半にかけて治療を始めると、歯が効率的に移動しやすく、全体矯正でも2年程度で完了する場合があります。
さらに歯並びの乱れが軽度であれば、1年半ほどで終了するケースも見られます。
一方、30代以降になると歯や骨が硬くなり、同じ治療内容でも移動に時間がかかることが多いです。
年齢を重ねても矯正は可能ですが、期間を短縮したい方は、できるだけ早く始めるほうがよいでしょう。
歯並びの乱れが軽度である
歯の重なりやねじれがわずかであれば、移動距離も少なくすむため効率的に治療が進みます。
たとえば、前歯が軽く前後にズレている程度や、わずかなすき間を閉じたい場合などは、1年~1年半ほどで整うこともあります。
奥歯を大きく動かす必要がないため、装置の調整回数も少なくすみ、患者の負担も軽減されるのが利点の1つです。
一方、歯列全体が大きく乱れているケースでは、噛み合わせの改善まで求められるため2年以上かかることが一般的です。
軽度の不正歯列なら見た目の変化も早く実感でき、治療のモチベーションを維持しやすいでしょう。
患者が協力的である
日常生活での取り組み次第で、裏側矯正の進み具合は大きく変わります。
自己管理を怠ると歯の移動が滞り、予定より長くかかることも珍しくありません。
以下に、患者が日頃から気を付けるべき点をまとめました。
- 歯科医師から指示されたゴムかけを忘れずに行う
- 毎日の歯磨きを丁寧にする
- 装置周囲を清潔に保つ
また、通院を欠かさず装置の不具合をすぐに報告できれば、余計な遅れを防ぐことが可能です。
医師の指示を理解し、積極的に協力する姿勢こそが、短期間で結果を得るための大切なポイントです。
裏側矯正の期間を短縮する9つの方法
近年は技術の進歩や補助的な治療の導入により、従来よりも効率的に歯を動かせるケースが増えました。
そのため、裏側矯正の取り組み方や治療法によっては、より早く治療を進められる可能性があります。
ここでは、期間短縮につながる9つのポイントを紹介します。
- インダイレクトボンディング法
- セルフライゲーションブラケット
- インプラント矯正
- 歯磨きを丁寧にする
- ゴムかけを使用する
- 定期的に通院する
- 食生活を見直す
- 歯科医師の指示を守る
- 矯正装置が外れたらすぐに歯科医師に相談する
これらを実践し、早期完治を目指しましょう。
インダイレクトボンディング法
裏側矯正では、ブラケットを正確な位置に装着することが治療の効率を左右します。
インダイレクトボンディング法は、事前に模型やデジタルデータを用いてブラケットの位置を設計し、その後まとめて口腔内に装着する方法です。
従来のように1本ずつ調整しながら取り付ける必要がないため、装置の精度が高まり、歯の移動も計画どおり進みやすくなります。
これにより治療の遅れを防ぎ、全体矯正でも期間短縮が期待できる点がメリットです。
また、装着にかかるチェアタイムも短縮されるため、患者の負担軽減にもつながります。
セルフライゲーションブラケット
従来のブラケットは、ワイヤーを固定する際にゴムや細いワイヤーを使用するため摩擦が生じ、歯の移動に時間がかかる傾向がありました。
しかし、セルフライゲーションブラケットは、歯の動きの効率化が可能です。
開閉式の構造により、ワイヤーを直接固定できるため摩擦が少なく、歯が自然に動きやすい環境を作り出せます。
これにより、全体矯正でも数ヶ月早く終えられる可能性があります。
調整時の負担も軽減されるため、患者にとって快適に通院を続けやすい点も、治療を継続しやすい利点です。
インプラント矯正
歯を効率的に動かすための補助装置として用いられるのがインプラント矯正です。
小さなチタン製のスクリューを顎の骨に固定し、それをアンカーとして歯を引っ張る仕組みで、通常よりも強い固定源を得られるのが特徴です。
従来の矯正では奥歯を支えにして前歯を動かす必要があり、奥歯が意図せず動いてしまうこともありました。
しかし、インプラントを利用することで余計な歯の移動を防ぎ、狙った位置に効率よく動かせます。
その結果、全体矯正でも治療期間を数ヶ月以上短縮されるケースが多く、難症例にも対応可能です。
歯磨きを丁寧にする
矯正装置を装着していると、食べかすや歯垢が残りやすく、虫歯や歯周病を招きやすくなります。
治療を予定どおり進めるためには、通常よりも徹底した歯磨きが必要です。
以下に手順をまとめました。
- 通常の歯ブラシで全体を磨く
- ブラケットやワイヤーの周囲を小回りのきくタフトブラシで清掃する
- 歯と歯の間はデンタルフロスや歯間ブラシを使い、取り残しを防ぐ
- 仕上げとして、フッ素入りの歯磨き粉やマウスウォッシュを活用する
上記の徹底により、虫歯予防効果を高められるでしょう。
ゴムかけを使用する
矯正治療では、歯の動きを補助するために小さなゴムを装着するケースがあります。
このゴムは、歯と歯の間や上下の歯をつなぐようにかけるもので、噛み合わせの調整や歯の移動を促進する役割を果たします。
指示どおりにゴムかけすることで、歯が計画的に動きやすくなり、治療期間の短縮が期待されることも。
しかし、装着を怠ったり時間が不十分だったりすると、歯の動きが遅れ、予定より治療が長引く原因となります。
ゴムは食事や歯磨きの際に外せるため負担は少なく、自己管理で効果を左右できる点が特徴です。
定期的に通院する
装置を付けたあとも、4~6週間ごとの通院が欠かせません。
場合によってはゴムかけの追加指示や、インプラントアンカーの調整が行われることもあります。
このような定期チェックを怠ると歯の移動が遅れたり、装置トラブルに気づかず治療が長引いたりするおそれがあります。
基本的な診療内容は以下のとおりです。
- ワイヤーを交換する
- ワイヤーを締め直す
- ブラケットの位置がズレていないか、装置が外れていないか確認する
- 口腔内の清掃状態をチェックする
- 歯磨きの方法を指導する
予定どおり進めるためには、定期通院を必ず守ることが大切です。
食生活を見直す
硬い食べ物や粘着性のある食品は装置を破損させる原因となり、修理に時間を要し、治療全体の遅れにつながります。
また、糖分の多い飲食物を頻繁に摂ると、虫歯リスクが高まり、追加の処置を要するケースも。
矯正中はやわらかく噛みやすい食材を中心に取り入れ、バランスのとれた食事を心がけることが大切です。
よく噛む習慣は歯の移動を助ける効果もあるため、無理のない範囲で咀嚼を意識するとよいでしょう。
歯科医師の指示を守る
歯科医師は、すべて歯の動きを考慮したうえで指示するため、従わないと治療が長引く原因となります。
とくに以下の内容は、基本的な指示として多くの患者に伝えられます。
- 毎日のゴムかけの装着時間を守る
- 歯磨きは複数の清掃器具を組み合わせる
- 診療間隔を空けすぎない
- 食事制限する
- 装置の不具合は早めに報告する
歯科医師が伝える指示は、一つひとつに明確な理由があり、守ることで治療の効率が大きく変わります。
矯正装置が外れたらすぐに歯科医師に相談する
裏側矯正ではブラケットやワイヤーが外れてしまうトラブルが起こることがあります。
装置が正しい位置から外れると、歯の移動が一時的に止まったり、誤った方向へ動いたりする危険性があります。
そのまま放置すると、数週間から数ヶ月単位で治療が遅れる原因になりかねません。
異変を感じたら自己判断で様子見するのではなく、できるだけ早く歯科医院へ連絡しましょう。
応急処置を行い、早急に装置を再装着することで、治療の計画を乱すことなく進められます。
裏側矯正の治療の流れ
ここでは、裏側矯正の流れをまとめました。
これらを事前に理解しておくことで、治療全体のイメージを把握しやすくなり、不安を軽減できます。
- カウンセリング
- 計画を作成する
- 装置を装着する
- 定期的に通院し調整する
- 保定する
順に見ていきましょう。
1.カウンセリング
現在の歯並びや噛み合わせの状態を確認し、どのような治療方法が適しているかを説明します。
患者が疑問点や不安を率直に相談でき、費用や治療期間、生活への影響などを詳しく聞けます。
また、矯正装置の種類や治療のメリット・デメリットも提示され、複数の選択肢から自分に合ったプランを選ぶことが可能です。
矯正に必要な検査の概要や今後の流れも案内されるため、治療開始後のイメージを具体的に持てるでしょう。
2.計画を作成する
精密検査の結果を基に治療計画を立てていきます。
歯型の採取やレントゲン撮影、口腔内写真などを記録し、歯の位置や顎の骨格を正確に把握します。
これらのデータを分析し、どの歯をどの方向に動かすのか、抜歯の必要性はあるのかなどの詳細を設計。
その後、治療にかかる期間の目安や費用の見積もりを提示され、患者は全体像を把握したうえで同意します。
3.装置を装着する
歯の裏側にブラケットを接着し、ワイヤーを通すことで歯を動かしていきます。
近年ではインダイレクトボンディング法が多く採用されており、あらかじめ模型上で位置を決めてから装着するため、精度が高く短時間ですみます。
装着直後は違和感や軽い痛みを感じることがありますが、数日から1週間ほどで慣れるケースがほとんどです。
また、発音がしにくいと感じることもありますが、練習することで徐々に改善していきます。
4.定期的に通院し調整する
装置装着後は定期的に歯科医院へ通い、歯の動きを確認しながら調整を重ねます。
通院の目安はおおよそ4~6週間に1度で、歯が計画どおりに移動するよう管理されるため、予定どおり通院することが大切です。
また、口内に傷や炎症が起きていないかもチェックされ、必要に応じて応急処置が施されます。
ブラッシングの指導や口腔内の清掃状況も確認されるため、トラブルの早期発見や予防につながります。
5.保定する
矯正治療で歯並びが整ったあとは、その状態を安定させるために「保定」と呼ばれる期間が設けられます。
歯は矯正直後に元の位置へ戻ろうとする性質があるため、リテーナーと呼ばれる装置を装着し、一定期間の固定が不可欠です。
保定期間の目安はおおよそ2〜3年ですが、症例によってはさらに長く続ける場合もあります。
取り外し可能なタイプと固定式があり、患者の生活スタイルや歯科医師の判断によって選択されます。
裏側矯正は期間を短縮するためにケアの徹底を
裏側矯正は歯の裏側に装置を装着するため目立ちにくい治療法で、多くの場合、完治に2~3年かかります。
しかし、部分矯正であれば1年以内に終えられる場合もあり、さらに日常のケアや新しい矯正システムの活用によって期間を短縮することが可能です。
表参道ヒカリデンタル矯正歯科では、プライバシーに配慮した完全個室で診療し、周囲を気にせず安心して治療を受けられます。
さらに、月々5,000円からの分割払いにも対応しているため、費用面の不安を軽減しながら矯正を始められるのも魅力です。
装置の種類も豊富に揃っているため、自分に合った最適な治療法を知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。




